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クロコウスバカゲロウ


クロコウスバカゲロウの写真
2016年10月5日…飼育・兵庫県西宮市産

 武庫川の河原に小さなアリジゴクの穴がたくさんありました。しかし、アリジゴクが小さくて種類が分かりませんでした。ただし、すり鉢状の穴を作る種類は5種類ほどしかいないそうなので確かめるのは飼育さえうまくいけばかんたんだろうと思っていました。穴を作る種類は、
・ウスバカゲロウ→都市の周辺でも雨のかからない場所にいる。いつも見ている。
・コウスバカゲロウ→?
・クロコウスバカゲロウ→海岸や河原の砂地にいる。これの可能性が高い。
・ハマベウスバカゲロウ→海岸にいるそうだが場所が限られるようだ。
・ミナミハマベウスバカゲロウ→南の地域の海岸にいるようだ。
となると、コウスバカゲロウかクロコウスバカゲロウと思われます。

 まずはアリジゴクをしっかりと大きくしました。最近はアリジゴク(ウスバカゲロウ類の幼虫)の分類の写真も載っていることがあるので大きくすればこれでも十分わかりそうです。成虫にまでできれば100パーセントだいじょうぶです。しかし、幼虫の分類もそんなに単純ではありませんでした。1ぴきずつ模様が違うのです。いわゆる生物多様性の個の多様性です。1ぴきだけ写真を比べてもとても同定まではいきません。

 上の写真は2016年10月5日午前6時40分くらいに羽化をしていたウスバカゲロウの成虫です。ほぼ色が黒くなった状態です。やっとクロコウスバカゲロウだという確信が持てました。

羽化後間もないクロコウスバカゲロウの写真

 午前6時40分のクロコウスバカゲロウです。まだ色が黒くなっていません。

羽ばたくクロコウスバカゲロウの写真

 羽ばたいたクロコウスバカゲロウの成虫です。

クロコウスバカゲロウの頭部と胸部付近の写真

 コウスバカゲロウとクロコウスバカゲロウの違いです。上の写真の脚には白っぽい部分がたくさんあります。これがクロコウスバカゲロウだそうです。コウスバカゲロウは脚のこの部分はほとんど黒だそうです。比較ができるといいのですがコウスバカゲロウの写真は持っていません。

クロコウスバカゲロウの繭と脱皮殻の写真

 クロコウスバカゲロウの繭と羽化殻です。これを見るとウスバカゲロウにはりっぱなあごがあることがわかります。はかなく死んでいくカゲロウとは大違いです。


終齢になった河原のアリジゴクの写真
2016年9月10日…兵庫県西宮市産

 毎日せっせと餌を与えて早く結果が分かるように成長させました。アリジゴクは餌を与えないと成虫になるのに何年かかるかわかりません。やっと終齢のような大きさになりました。写真に撮りました。ところが上の写真のように砂だらけでまったく種類が分かりませんでした。

クロコウスバカゲロウの頭部下側の模様の写真

 アリジゴクの種類を同定するには、幼虫の腹側の頭部の下の模様を見るとわかるようです。そのまま見るとわからないので、水を含ませた筆でていねいに砂を落としました。上の写真はクロコウスバカゲロウに似ています。

クロコウスバカゲロウの頭部下側の模様の写真

 ねんのために別のアリジゴクを見てみました。模様がありません。だからといって別の種類とは考えられません。

クロコウスバカゲロウの頭部下の模様の写真

 やはり少し模様が違います。しかし、最初のものとは似ています。個体によって模様に違いがあります。アリジゴクの幼虫の模様を確認するときには、背側でもどちらでも、ていねいに砂を落とし、できるだけ数ひきの幼虫を確認した方がいいと感じました。

 しかし、これでほぼクロコウスバカゲロウのアリジゴクで間違いがないのではと思えるようになりました。


アリジゴクのすり鉢状の巣の写真
2016年8月8日…兵庫県西宮市

 武庫川の河原で生き物の観察をしていた時です。ふと周囲のツルヨシの辺りを見ると数えきれないほどのアリジゴクのすり鉢状の穴がありました。数が多いのと雨が直接かかる場所なのでふだん見ているふつうのウスバカゲロウでないことはわかりました。

 アリジゴクを掘りだしてみました。下の写真です。あまりに小さすぎて同定は誤ってしまいそうです。飼育して同定することにしました。

小さな河原のアリジゴクの写真


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