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ツチイナゴ…成虫で冬をこすバッタ

 2006年1月29日、カヤネズミの巣をさがして猪名川の河川敷を歩いていると1ぴきのバッタが足元から飛び出しました。追いかけたのですがなかなか見つかりません。きっとツチイナゴなのです。このあたりでは、大きなバッタで成虫で冬を越すバッタはこの種類しかいません(※1)。着地したあたりを探すといきなり飛び出し、近くの枯れた茎にとまりました。ツチイナゴです。

※1…キリギリスのなかまではクビキリギスが成虫で越冬します。ただし、小さなバッタのなかまには成虫で越冬するものが結構います。

成虫で越冬するバッタ…ツチイナゴ
2006年1月29日…大阪府池田市桃園

 ツチイナゴの写真です。

 まわりの枯れ葉とそっくりな色をしています。飛び出さなければわからなかったでしょう。

 このあたりで冬に見つかるバッタはツチイナゴしかいません。種類を間違えることはありません。しかし、夏にはたくさんのバッタがいます。特徴を覚えると夏にも種類を間違えません。目の下に向けてはっきりとした黒い線があります。これを見て「涙目」と呼ぶ人がいます。

 どうでしょう。涙が流れているように感じますか。

 でも、冬の寒さをがまんできずに泣いているのではありません。

 子どものころから「涙目」です。あれっ。子どもの写真が見つかりません。春までお待ちください。

と、以前に書いていたのですが写真が出てきました。しかし、上の説明はよくないような気がしてきました。まず、幼虫は初夏まで出てきません。

ツチイナゴの幼虫
2005年9月3日…大阪府池田市杉ヶ谷

 2005年9月に池田市の五月山杉ヶ谷で撮影したものです。

 成虫とはまったく違う感じですが目の下に黒い部分があります。やっぱり涙目です。

黄緑色のツチイナゴ幼虫
2011年8月20日…大阪府池田市伏尾町

 バッタのなかまでさほど珍しい種類でもありませんが、幼虫を見ているととてもきれいな黄緑色をしていると思います。点々の模様があってかわいいものです。よく観察するといろいろな発見があります。胸には翅になるもとの部分を見つけることができます。それと後脚の間には白っぽい丸があります。これは耳で鼓膜(こまく)です。

 2006年3月7日、職員トイレにツチイナゴがいました。野山で見つけようと思っても簡単には見つからないのですが…。

 周囲には、あまり豊かな自然はありません。植物が貧しい環境にも耐えられるのでしょう。

2006年3月7日…大阪府池田市豊島北

赤褐色のツチイナゴ幼虫
2007年10月20日…兵庫県川西市多田

 ツチイナゴの幼虫といえば、「きれいな緑色をしているもの」と思いがちですが、ときおり写真のような赤褐色の幼虫も見かけます。

晩夏のツチイナゴの成虫
2010年9月18日…大阪府池田市伏尾町

 2010年9月18日、ツチイナゴの成虫を見ました。ほかのツチイナゴはまだほとんどが幼虫でした。

夜のツチイナゴ
2010年9月10日…大阪府池田市伏尾町

 2011年は9月10日にツチイナゴの成虫を見ました。昨年より少し早くなりました。ただし、見に行っている回数の関係もあるのかもしれません。

クズの葉を食べるツチイナゴ
2007年10月28日…大阪府池田市桃園

 ツチイナゴがクズの葉を食べていました。ツチイナゴはほかの植物も食べますが、特にクズを好みます。そのため河川敷などクズが多く生えた場所でよく見かけます。

 ちょっと歩くとまたクズを食べていました。猪名川河川敷でのことです。

クズが好きなツチイナゴ

5月のツチイナゴ
2010年5月16日…大阪府池田市新町

 山々の木々も透き通るような緑になりました。冬があったことを忘れさせるようなこの時期に、成虫越冬したツチイナゴがいました。

オオバクサフジにとまるツチイナゴ
2012年10月18日…大阪府池田市吉田町

オオバクサフジの花

 オオバクサフジの花もそろそろ終わりかけてきたようです。

 花を見ているとツチイナゴがとまっていました。オオバクサフジの葉を食べているように見えます。ちょっとぜいたくな気がします。

花壇にいたツチイナゴ
2013年4月25日…大阪府池田市桃園

 冬の間、ずっと花壇にバッタがいると近所の方に聞いていました。クビキリギスだと思っていました。ちょうど植え替えをしておられるときに顔を出しました。ツチイナゴでした。